コラージュとアクリル絵具を用いた混合技法による2011年の作品からのジクレー版画(*)。


ここでは二人のモナリザが並んでいます。ものが二つ、あるいはそれ以上あるという、「複数性」に私はいつも謎めいたものを感じてきました。たとえ同じように見えようといかなる事物や現象も一回性のもので、本来二度と再びそのままの形で現れることはないからです。
大量に作られる工業製品に取り巻かれている今の暮らしを思えば、この感覚はいささか先祖返りしているのですが、本作の原画ではモナリザという世界でも稀にみる、イメージとしてブレない存在を二名にして、飽きる程知っている顔の一部を一筆の絵具の流体状の痕跡で隠しました。その痕跡は一回性の相貌を帯びており、下にある彼女らの見かけの複数性はウソですよ、ということを表象しています。


ということを創った後に考えました。作品のありうべき解釈、中でも自分にとって制作前や制作時の企図よりもよりしっくりくるそれは、常に創られたもの自体からやってきます。これが、イメージしたり考えたりすることでなく実際に創ることの価値であると、私は考えています。

(*)ジクレー版画:データに基づき専用のインクジェットプリンターで出力される、高精細・広色域で保存性に優れたミュージアムクオリティのデジタル版画。

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